初期の症状はあいまいで、体調の変化と見過ごしてしまう

甲状腺の病気は、見逃されたり、まちがえられやすい

甲状腺の病気は、自分ではなかなか気づきにくい病気です。
もちろん、首のはれのような具体的な症状があれば発見されることもありますが、多くの場合、初期は症状があいまいで、見逃してしまいます。
また、疲れやすい、朝の寝起きが悪いといった症状は、病気ではなくても見られるため、ちょっとした体調の変化と軽く考えてしまいがちです。
そうして見過ごしていくうちに、症状はじわじわと進みますが、いつ発病したのか、自分でもわからないことが多いのです。
また、さまざまな症状が、ときには正反対の形であらわれるのも、甲状腺の病気のわかりにくいところです。
たとえばバセドウ病では、甲状腺ホルモンの働きが過剰になりますので、暑がりになって汗をたくさんかき、活動性が高くなる症状があらわれます。
一方、橋本病では甲状腺ホルモンの働きが弱まり、新陳代謝が低下して寒がりになったり、気力が衰え、活動性もにぶくなります。
ただし、程度の軽い機能低下症は、症状が微妙で、人によって出たり出なかったりします。甲状腺の病気の初期は、症状から自己判断するのはむずかしいのです。

全身にあらわれる多様な症状はほかの病気とまちがえられやすい

甲状腺の病気には、ほかの病気とまちがえられやすいという特徴もあります。
甲状腺ホルモンは、ほとんどの臓器に影響をおよぼすため、症状は全身に、しかも非常に多彩な形であらわれるからです。どこがどのように悪いのかがわかりにくい病気なのです。
バセドウ病がまちがえられやすいのは、「心臓病」(動悸(どうき)、頻脈(ひんみゃく)などから)、「高血圧症」(最高血圧が高くなるため)、「糖尿病」(口渇(こうかつ)、食べてもやせる、水をたくさん飲む、などから)、「更年期障害」(のぼせ、動悸、多汗などから)、「がん」(体重減少などから)、「パーキンソン病」(手指のふるえから)、「自律神経失調症」(多彩な症状から)、などです。
橋本病がまちがえられやすいのは、「うつ病」(気分の落ち込みなどから)、「腎臓病」(むくみなどから)、「更年期障害」(皮膚のかさつき、月経不順などから)、「認知症」(記憶力の低下などから)、などです。
甲状腺の病気は、まちがえやすいほかの病気ときちんと鑑別し、正しい診断をすることが非常に大切となります。

医療法人社団金地病院