甲状腺の病気は決して珍しいものではなく、日本では10~20人に1人が、何らかの甲状腺の病気を持っているといわれています。誰でもなる可能性があるのですが、症状があいまいでわかりにくく、不調があっても病気と気づかないまま過ごしている方も多いようです。ほかの病気とまちがえられやすいという特徴もありますので、気になる症状がある場合は、甲状腺疾患の専門医を受診されることをおすすめします。
甲状腺の病気の中で、患者数が多いのはバセドウ病や橋本病です。バセドウ病は20~30歳代の若い女性に起こりやすく、一方、橋本病は中年期の女性によく見られます。また、数は少ないのですが、甲状腺悪性腫瘍もできることがあります。
最近は治療法が進歩し、ごく一部のがんを除き、これらの病気のほとんどは適切な治療を続けていれば、治っている状態へと導けるようになっています。ですから、甲状腺の病気という診断を受けても、あまり不安に思わずに適切な治療を受けてください。見ちがえるほど元気になり、仕事や勉強、運動、旅行、妊娠・出産など、健康な人と変わりなく生活できるようになります。
ただし、定期的に検査をして、甲状腺の機能や状態を調べ、経過を見ていくことがとても大切です。バセドウ病や橋本病は、ときには10年、20年単位で変化することがあるからです。場合によっては、一生薬を飲みつづけなければならないこともあり、そのチェックも必要です。あせらず、気長に甲状腺の病気とつきあっていただきたいと思います。
私は長年、甲状腺疾患の専門医として、月に1500人以上の診察・治療にあたりながら、患者さん自身が病気をよく理解し、納得した上で前向きに取り組むことが、いかに重要であるかを実感してきました。
甲状腺の病気で悩まれている方が、一日も早く健康を取り戻し、毎日気持ちよく過ごせるようになることを願っています。そのための「療養ガイド」としてお役に立てば幸いです。

医療法人社団金地病院 院長 山田惠美子

医療法人社団金地病院