甲状腺の病気とわかっても、不安にならないで

こわい病気ではないがほうっておくと全身に影響が

私たちは、よくわからないものに対しては、どうしても不安を感じてしまうものです。甲状腺という臓器があることは知っていても、ここに起こる病気については、なじみがなく、わかっている人は思いのほか少ないのです。ですから、気になる症状があって、ある程度の予感をいだいていたとしても、医師から「あなたは甲状腺の病気です」と言われると、多くの人は、「いったいどんな病気なのだろう」「これからどうなるのだろう」と不安や心配になります。
しかし、病気のことを正しく理解していれば、落ち着いて治療にとりくむことができます。まず、甲状腺の病気について一般的に多く見られる誤解を解いておきましょう。

甲状腺の病気は珍しくない

日本では、自覚症状がなくても何らかの甲状腺疾患を持っている人が、10~20人に1人といわれます。これは、国民病といわれる糖尿病に近い割合です。
甲状腺の病気は、決して珍しい病気ではありません。

症状の出方はさまざま

甲状腺の病気は症状があいまいで、人によってさまざまなあらわれ方をします。よく「バセドウ病になると眼球が飛び出す」といわれますが、この特徴的な症状があらわれるのはバセドウ病の10人中3~4人。既成のイメージに振り回され、あまり心配しすぎないようにしましょう。

不治の病ではない

甲状腺の病気の多くは自己免疫がかかわるため、「やっかいで治らない病気」と思い込んでいる患者さんが少なくありません。しかし、治療法は進んでいます。きちんと治療すれば、見ちがえるほど元気になり、運動でも妊娠でも、何でもできるようになります。

服薬が一生必要とは限らない

バセドウ病や橋本病では、薬による治療が中心です。医師の指示を守り、飲みつづけることが大切ですが、甲状腺の機能が正常に戻れば場合によっては薬をやめられるようになります。

生命にかかわることはまれ

甲状腺の病気の中で、生命にかかわるようなこわい病気は多くはありません。甲状腺がんも、ほとんどは悪性度の低いおとなしいタイプが多いので、早期発見・早期治療すれば元気に生活ができます。
このように、甲状腺の病気は、適切な治療をきちんと行えば、元気で健康な生活を取り戻すことが十分に可能なのです。こわいのはむしろ、初期のあいまいな症状を軽く考えて、ほうっておくことです。自分はだいじょうぶと自己判断しているうちに、病状が悪化し、全身の健康をおびやかしていきます。

医療法人社団金地病院