自己免疫による眼症状は、抗甲状腺薬だけでは回復しない

バセドウ病によって起こる目の異常を、バセドウ病眼症(がんしょう)といいます。
バセドウ病眼症は、主に次の2つに分けられます。

●甲状腺機能亢進によるもの

上まぶたがつり上がり、目がかっと見開いた状態。「上眼瞼(じょうがんけん)後退」といいます。

●自己免疫の炎症によるもの

炎症のため眼球が出たり(眼球突出)、まぶたがはれます(眼瞼腫脹(しゅちょう))。これにより「結膜の充血」「角膜が傷つく」「ものが二重に見える(複視(ふくし))」「視力障害」などが起こることがあります。
甲状腺機能を正常にしなければ、眼科の治療もうまくいかないため、抗甲状腺薬を欠かすことはできません。

目の障害のタイプや、程度に合わせた治療を

バセドウ病眼症は、甲状腺疾患の専門医と、眼科の専門医が連携して治療にあたる必要があります。眼科を受診する場合は、甲状腺疾患の担当医に紹介状を書いてもらうとよいでしょう。
眼科ではMRI検査などで目の障害のタイプや程度を調べ、その人の症状に合った治療をします。

●副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)

炎症をやわらげ、免疫を抑制して抗体を減らす働きがあります。重症の眼球突出や複視では、ほかの治療法と併用されます。使い方は、点滴、内服、眼瞼などに直接注射する方法の3種類。副作用が出やすいため、治療は慎重に進めます。

●放射線の照射

リンパ球浸潤を抑える目的で、眼球の奥の筋肉組織などに弱い放射線を照射し、眼球の突出を軽くします。周囲への影響を避けるため、ほかの部位を保護するお面をつけ、照射は10回に分けます。

●手術

複視や視力障害の治療法。目の眼窩(がんか)の壁(骨)の一部や脂肪を取り除き、スペースを広げて圧力を下げる手術や、眼筋(がんきん)の癒着した組織をはがして傷(いた)んだ部分を修復する手術があります。高度な技術が必要ですが、成功すると大変よくなる場合もあります。

医療法人社団金地病院