甲状腺を小さくし、ホルモン分泌を少なくする

バセドウ病の手術は、甲状腺の大部分を切り取って小さくし、甲状腺ホルモンをつくりすぎないようにする治療法です。

●効果が高く、欠点が少ない

手術治療は、ほかの2つの治療法(薬物療法、アイソトープ治療)よりずっと古くから行われてきた方法で、治療成績も2つよりよい結果が期待できます。
効果があらわれるのが早いが、バセドウ病の状態により、甲状腺の切除範囲は違います。抗甲状腺薬を飲まないようにするため、最近は甲状腺をほとんど残さない手術をします。
欠点は、2週間程度の入院が必要なことです。傷あとが残りますが、現在では、首のつけ根に沿ってメスを入れ、目立たなくする処置が発達しています。ケロイド体質でない限り、数年後にはほとんど目立たなくなります。

●術後、10%程度が再発する

術後の再発は少ないのですが、ゼロではありません。手術を受けた人の10%程度に、バセドウ病が再発するとされています。
再発した場合、再び手術を行うことはできません。最初の手術による癒着(ゆちゃく)があったり、合併症も起こりやすくなるからです。この場合は、抗甲状腺薬を服用するか、アイソトープ治療を行うことになります。

事前に薬で機能を調整手術時間は1~2時間

手術の大まかな流れを見てみましょう。

  • 手術前

    入院前に、抗甲状腺薬やヨウ素剤(抗甲状腺薬より早く血中のホルモン濃度を下げる)などで、甲状腺機能が正常になるよう調整します。機能が亢進(こうしん)したまま手術をすると、症状が急に悪化することがあるからです。
    入院してからも、甲状腺機能を抑える治療をつづけます。

  • 麻酔

    全身麻酔で行います。

  • 手術時間

    1~2時間です。

  • メスの入れ方

    頸部(けいぶ)のつけ根に沿って、横に入れます。

  • 切除部分

    甲状腺は、背面を残し中央部を切除します。最近では、再発を防ぐため甲状腺を全摘出するのがほとんどです。

  • 入院から退院まで

    大体2週間必要です。

手術による合併症主なものは2つ

手術による合併症は非常に少ないのですが、まれに次のようなことが起こります。

●嗄声(させい)(かれ声)

甲状腺の裏にある反回(はんかい)神経は、声門を開閉する筋肉を支配しています。この神経を手術で傷つけると、声がかすれたりします。

●テタニー症状

甲状腺の両葉の後ろには4つの副甲状腺があり、血液中のカルシウム量を調節するホルモンを分泌しています。
手術の際、この副甲状腺を切除してしまったり傷つけたりすると、副甲状腺ホルモンが分泌されなくなり、血中カルシウムイオン濃度が低下して、テタニー症状(顔面がこわばる、手足がしびれるなど)を起こすことがあります。

ネックレスなどで隠せる位置にメスを入れます。ケロイド体質でなければ、数年で目立たなくなります。

甲状腺手術…入院からの流れ

  • 入院

  • 手術前、数日間

    抗甲状腺薬やヨウ素剤で、甲状腺機能を抑える治療をする。

  • 手術当日

    朝から絶食となり、術後は食事だけでなく水分も禁止。手術は1~2時間で終わる。

  • 手術の翌日

    翌朝から食事がとれ、トイレや洗面にも歩いて行ける。

  • 術後、14日以内

    経過にもよるが、だいたい術後2週間以内で退院できる。

  • 退院後3週間

    3週間で学校や職場に復帰できる。

手術治療が向いている人

  • 甲状腺のはれが大きい人
  • 妊娠中、または数年以内に出産を希望している人
  • 薬の効果があらわれず、薬がやめられない人
  • 薬の副作用が出ている人
  • 通院治療に時間がかけられない人
  • 腫瘍(甲状腺がんなど)の合併がある人
医療法人社団金地病院