あちこちにあらわれる「むくみ」

甲状腺ホルモンは代謝を高めるホルモン。甲状腺機能低下症では、このホルモンが不足するわけですから、体中の物質や水分がうまく代謝できず、あちこちにたまって、むくむようになります。
粘液水腫(ねんえきすいしゅ)とは、この「むくみ」が重症化したもので、全身にさまざまな形であらわれます。
声帯や咽頭(いんとう)の粘膜がむくみ、声がしわがれる。舌がむくんで、ろれつが回らない話し方になる。体に水分がたまってむくみ、食べないのに太るというような症状です。

●粘液水腫顔貌(がんぼう)

顔がむくみ、まぶたや唇がはれ、ほおがたれ、髪の毛が薄くなり、眉毛が脱落するなど、独特の無気力な感じの顔つきになります。

●粘液水腫性昏睡(こんすい)

機能低下を治療せずに放置したり、治療を中断していると、意識がなくなってきます。寒さなどの身体的ストレスや感染症などをきっかけに、低体温で脳代謝が低下し、呼吸困難から死亡する可能性が高くなります。ただし起こるのは非常にまれで、きちんと治療をしていれば心配はいりません。

治療をすれば、むくみは取れる

粘液水腫は、甲状腺機能低下症が悪化し、ホルモンが極端に減少している状態です。
このような状態になると、皮フの下の組織にはムコ多糖類(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸など)という粘液状の物質が多くなります。ムコ多糖類には水分を保持する性質があるため、重いむくみが起こりやすくなるのです。
粘液水腫のむくみは、腎臓などが悪化してあらわれるむくみと違い、指で押してもすぐ戻り、へこんだくぼみが残らないという特徴があります。
粘液水腫は、甲状腺ホルモン剤で治療すれば、必ずよくなります。顔のむくみも取れますので、若々しい表情を取り戻せます。

医療法人社団金地病院