橋本病以外の機能低下症も、薬でホルモンを補充します
バセドウ病の治療で機能低下症になる場合
バセドウ病のアイソトープ治療や手術治療のあと、甲状腺機能低下症になることがあります。
治療法によって違いはありますが、大体20~50%の人が、バセドウ病のホルモン過剰から一気にホルモン不足の状態になるといわれています。
治療が原因となるので、このような機能低下症を「医原性甲状腺機能低下症」と呼ぶこともあります。医原性甲状腺機能低下症は、甲状腺がんなどのため、手術で甲状腺を大きく切除した場合にも起こります。また、C型肝炎のインターフェロン療法でも、約8%の人に甲状腺機能低下症が起こるといわれます。
●治療
医原性甲状腺機能低下症の治療は、いずれも薬で甲状腺ホルモンを補充します。
TSHの分泌がなくなり機能低下症になる場合
甲状腺には病気がないのに、甲状腺ホルモンの合成・分泌をコントロールする下垂体に病気があると、甲状腺機能低下症になる場合があります。
代表的なのは、シーハン症候群です。女性が出産時に大量出血して、下垂体へ血液が流れなくなり、下垂体が壊死(えし)(細胞が死滅)してしまう病気です。
シーハン症候群では、下垂体からのTSHの分泌がなくなるため、甲状腺ホルモンがつくられず、機能低下症になります。
ほかにも、下垂体にできる腫瘍や、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)(下垂体が位置する場所にできる腫瘍)などで下垂体が圧迫され、TSHの分泌が減り、甲状腺機能低下症になることもあります。
先天的な甲状腺異常で機能低下症になる場合
クレチン症は、甲状腺ホルモンが生まれつき不足する病気です。
先天的に甲状腺がない、甲状腺が非常に小さい、甲状腺はあるが、ホルモンの合成障害がある、といった場合に起こります。
クレチン症の赤ちゃんは、そのままでは知能が障害され、順調な発育ができません。ただし現在では、新生児へのマススクリーニング検査が実施されていて、早期発見・早期治療ができるようになっています。
クレチン症があっても、生後3カ月以内に治療を始めれば正常に育つことができます。
●治療
おとなの機能低下症と同じく、甲状腺ホルモン剤で治療します。成長の段階に応じ、適切な量を補充することが重要です。