ウイルス感染による炎症で一過性の機能亢進症になる

甲状腺がはれて痛みや発熱がある場合、もっとも可能性のある病気は「亜急(あきゆう)性甲状腺炎」です。
ウイルスに感染して、炎症が起こると考えられますが、原因ウイルスは特定できていません。
炎症によって破壊された甲状腺からは、蓄えられている甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出てホルモン濃度が高くなり、一過性の甲状腺機能亢進症が起こります。

症状のあらわれ方

上気道炎などのカゼのような症状から、数日後に、痛みのあるかたい結節(しこり)が甲状腺の片側に出現します。しこりは、甲状腺の片側から反対側にも移動することがあります。
痛みは軽いものから強いものまであり、あごから頭部まで放散するように感じます。発熱は、軽いものから、夕方から夜にかけ38~40度にもなる場合もあります。
動悸や息切れ、倦怠(けんたい)感、体重減少など、バセドウ病のような症状もあらわれます。経過により、甲状腺機能が変動して、ホルモンの蓄えが出てしまうと、今度はホルモン不足による機能低下症になります。
ただし、1カ月ほどすると、甲状腺は再びホルモンをつくり始め、数カ月後には甲状腺機能が正常な範囲に戻る場合が多いです。

触診、エコー、血沈で診断痛みには薬を使用

検査と診断

診断では、まず触診で、甲状腺の中に痛むしこりがあるかどうかを確かめます。激しい痛みで触診できない場合もありますが、それも判断材料になります。また、超音波(エコー)検査をすると、亜急性甲状腺炎では、疼痛(とうつう)部位で炎症のエコー所見が確認できます。
血沈検査では、100mm/1時間とかなり亢進しますが、白血球は多くの場合正常です。さらに、血液検査で甲状腺ホルモン(T3、T4)の値が高く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が抑えられていれば、ほぼ確定できます。

症状を抑える治療

亜急性甲状腺炎そのものは、治療をせず経過を見るだけでも、約3カ月で自然に治ります。
しかし、痛みや発熱などの自覚症状がつらいので、薬による治療が必要です。痛みや発熱が軽い場合は、非ステロイド系の消炎鎮痛剤などで症状をやわらげます。
痛みが激しく、高熱がある場合は、ステロイド薬を服用します。だいたい翌日には痛みが取れ熱が下がるほど、劇的に効きます。2~3カ月かけてゆっくり減らしていきますが、中断や急な減量をすると再燃します。再燃したときは、また薬を増量して治療をします。

亜急性甲状腺炎との鑑別が必要な病気

橋本病の急性増悪 もともと橋本病があり、そこへ痛みや発熱が出現。鑑別がむずかしい。
結節性甲状腺腫での内出血 発熱はなく、エコーで嚢胞(のうほう)像が見られる。
急性化膿性甲状腺炎 若い人に多い。
左側が多く、皮膚が発赤(ほっせき)、膿瘍(のうよう)になる。
甲状腺未分化がん 急速に甲状腺が腫大(しゅだい)。細胞診で診断する。
甲状腺悪性リンパ腫 もともと橋本病があり、急速に甲状腺が腫大。細胞診で診断する。
医療法人社団金地病院