明らかになったのは20世紀後半

首がはれたり、眼球が飛び出す病気があることは、すでに紀元前から知られていたようです。しかし、それが「甲状腺という臓器」の病気とわかったのは17世紀になって。さらに、その臓器から分泌されている「ホルモン」が、それも2種類あることがわかったのは、20世紀も後半になってからのことでした。
甲状腺ホルモンは、1914年、最初にヨウ素を4個持っているサイロキシン(T4)が発見されました。1953年に、もう一つの甲状腺ホルモン、ヨウ素を3個持っているトリヨウ素サイロニン(T3)が見つかりました。
これによって、甲状腺の病気のメカニズムがわかるようになり、治療法の開発が進みました。

パワフルなT3、調整役のT4

T4とT3、この2種類の甲状腺ホルモンは、どちらも甲状腺でつくられ血液中に分泌されます。ただし分泌の中心はT4です。血液中の甲状腺ホルモン全体を見ても、T3が占める割合は2%程度です。
T3は20%が甲状腺でつくられ、残りの80%は目的の臓器の中で、T4からヨウ素が1個はずされてT3となり、甲状腺ホルモンとしての働きをします。
甲状腺ホルモンは、目的の臓器の細胞内の核にある甲状腺ホルモン受容体と結びつくことで役割を果たします。この結合力はT3のほうがT4よりも10倍ほど強力。ただし役割を終え、血中から除去されるスピードもT3のほうが速くなっています。T3はT4よりもパワーがあるのですが、寿命は短いのです。
こういった特徴から、T4は、T3が甲状腺ホルモンとして働く前段階のホルモンで、甲状腺ホルモンを安定的に供給するための調整役のホルモンと考えられています。
たくさん食べて飽食状態のとき、T4は盛んにT3に変化しますが、飢餓(きが)状態のときはあまり変化をせずに省エネし、T3の供給が滞らないようにするのです。

医療法人社団金地病院