甲状腺悪性腫瘍の多くは、おとなしいタイプ。一部に悪性度の高いものも
それぞれ性質が異なる5タイプの悪性腫瘍
甲状腺悪性腫瘍は、若年者から高齢者まで各年齢層に見られます。男女比は1対6で、圧倒的に女性が多いのも特徴です。
初期は症状がありませんが、しこりがある程度大きくなると、外から見てわかります。そのしこりが良性か悪性かをきちんと診断することが重要です。
甲状腺の悪性腫瘍には、5タイプ(組織型)があり、それぞれ性質が異なります。
●乳頭がん
日本人がかかる甲状腺悪性腫瘍の80~90%は乳頭がんで、30~40歳代に多く見られます。
進行が遅く、しこりだけがあって何年も変化しないことの多い、たちのよいがんですが、ある時期から急速に進行する場合がありますので、油断はできません。
甲状腺近くのリンパ節へ転移し、先にリンパ節がはれ、調べてみて初めてがんとわかることがあります。
大部分の乳頭がんは手術をし、治療後の経過もよく、生存率は95%です。
●濾胞(ろほう)がん
30~40歳代に多く、症状としては、首にしこりがあるだけの場合が多い、おとなしいがんです。調べても良性腫瘍との区別がつきにくく、手術前には診断がむずかしい面があります。肺や骨など、離れた部位へ転移しやすいので、注意が必要です。
●髄様(ずいよう)がん
甲状腺には、甲状腺ホルモンをつくる濾胞細胞だけでなく、カルシトニン(血液中のカルシウム値を下げるホルモン)をつくる「C細胞」があり、この細胞ががん化するものです。甲状腺悪性腫瘍の1%がこの髄様がんで、3分の1は家族性の遺伝が原因となって起こります。
●未分化がん
未分化がんは甲状腺悪性腫瘍の1~2%で、腫瘍が増殖するスピードは、あらゆるがんの中でもっとも速いといわれる、きわめて悪性度の高いがんです。男女比は1:1.5で長年存在していた乳頭がんや濾胞細胞がんが突然未分化がんに転化します。ほかの甲状腺悪性腫瘍とは全く性質が異なり、極めて予後不良です。有効な治療方法は、未だ確立されていません。
●悪性リンパ腫
男女比は1:2で女性に多く、甲状腺悪性腫瘍中の2~5%。60歳以上に多いがんです。本来はリンパ組織にできる悪性腫瘍ですが、橋本病があると、甲状腺に悪性リンパ腫ができることがあります。甲状腺全体が急に大きくなり、放置すると気管を圧迫して窒息をまねくこともあります。早く見つけ治療をすれば、予後(よご)は良好です。