バセドウ病や橋本病の診断に欠かせない抗体検査
自分の体を攻撃する自己抗体を調べる検査
バセドウ病や橋本病は、甲状腺に対して自己免疫反応を起こすことで発症します。
そこで、異常を起こすもとになる自己抗体(自分の体や細胞に反応する抗体)があるかどうか、その種類、程度を血液から調べます。
自己抗体には、いくつもの種類がありますが、甲状腺の病気の場合は、次の4つを調べます。
●抗TSH受容体抗体(TRAb)
TRAbは、バセドウ病を引き起こす自己抗体です。
甲状腺ホルモンは、甲状腺細胞が健康な場合、下垂体から出される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の刺激によって分泌が促されます。
甲状腺細胞には、TSHがくっつくTSH受容体があります。ところが、これに対する自己抗体、つまり抗TSH受容体抗体(TRAb)ができると、TRAbはTSHにかわってこの受容体にくっつき、甲状腺を刺激しつづけて甲状腺ホルモンを過剰につくらせてしまうのです。
TRAbの数値は、抗甲状腺薬で治療をすると下がってきます。
●状腺刺激体型抗体(TSAb)
甲状腺細胞にくっついて甲状腺を刺激する抗体であり、バセドウ病で陽性になります。バセドウ病眼症の発症とも関連があります。
●抗サイログロブリン抗体(TgAb)
濾胞(ろほう)には、甲状腺ホルモンをつくり貯蔵する上で欠かせないサイログロブリンというたんぱく質があります。TgAbは、このサイログロブリンに対する自己抗体です。TgAbは、橋本病でもバセドウ病でも見られます。
●抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
ペルオキシダーゼは甲状腺細胞に含まれており、ヨードに働きかけ甲状腺ホルモンをつくる酵素(こうそ)です。TPOAbは、このペルオキシダーゼに対する自己抗体です。TgAbと同じく、橋本病とバセドウ病の両方に見られます。
ただし、TPOAbもTgAbも、診断に使われる場合は、バセドウ病よりも橋本病に有効です。
エコー検査をしても、首のはれ(甲状腺腫)が認められないような初期の橋本病が、TgAbやTPOAbの測定で見つかるからです。
甲状腺の機能に異常がなくても、TgAbかTPOAbか、どちらかの自己抗体が陽性なら、橋本病(慢性甲状腺炎)があると考えられます。
こういった抗体検査の発達で、橋本病は早い段階で発見することができるようになっています。
甲状腺の自己抗体検査・基準値
TRAb(抗TSH受容体抗体) 1.9未満
TSAb(甲状腺刺激型抗体) 120以下
TgAb(抗サイログロブリン抗体) 40以下
TPOAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体) 50以下
※基準値は医療機関によって異なる場合があります