甲状腺にできる良性腫瘍は、治療をしなくても経過を見ていけばよい場合も少なくありません。
治療が必要な場合は、腫瘍の大きさや種類などを見て手術を行います。腫瘍の状態によって、薬や、吸引、PEIT(ペイト)などの方法もあります。

どんな腫瘍なら、治療をせず経過を見るだけでよいのか

甲状腺の良性腫瘍は、特に治療をしなくてもさしつかえない場合があります。

  • はっきり良性と確認されている
  • 周囲を圧迫するほど大きくない
  • 外から見ても目立たない

このような腫瘍は、ほかの部分へ影響をおよぼすことはなく、日常生活にも支障はありません。
ただし、良性と診断されても、絶対に悪性ではないと確定するのはむずかしい面があり、徐々に腫大しているので、経過観察は必要です。
3~6カ月に1度は医師を受診し、チェックを受けるようにしてください。

腫瘍によっては、良性でも手術をする

●腫瘍が大きく周囲を圧迫する

良性腫瘍でも、大きくなると周囲を圧迫し、気管や食道にまで影響することがあります。
首のはれも目立つようになり、まわりの目が気になってストレスになることもあります。
また、腫瘍は増大する傾向が強いほど、悪性の可能性も高くなるため、手術がすすめられます。

●悪性との判断がむずかしい

腫瘍が小さくても、良性か悪性かの判断がむずかしく、がんが疑われる場合は、手術で切除したほうが安心です。

●ホルモンを過剰につくる

腺腫様甲状腺腫では、甲状腺機能はほぼ正常に働くのですが、まれにホルモンが過剰につくられることがあります。このようなケースでは手術がすすめられます。
なお、TSHの調整がきかずに、腫瘍が独自にホルモンをつくってしまうプランマー病でも手術が行われますが、最近はエタノール注入療法(PEIT)や、アイソトープ治療もあります。

嚢胞は、内容液を吸引すると小さくできる

嚢胞は、多くはしこりの中が液状になります。この内容液を、超音波(エコー)で確認しながら針を刺して、吸い出します。
しこりが小さくなったり、ときには消失させることができます。
吸引後、しこりが縮小したままの状態を保っていれば、経過を見ます。ただし、再び液体がたまってくる場合は、エタノール注入療法(PEIT)で治療することもあります。
なお、嚢胞が手でさわってもわからないほど小さく、超音波で調べて初めてわかる程度で、がんが疑われない場合は、吸引治療をせず経過を見ます。

甲状腺ホルモン剤で、大きくさせない場合がある

甲状腺ホルモンは、脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって合成・分泌が調整されていますが、このTSHには、腫瘍の細胞を増やし、腫瘍を大きくする作用があります。
つまり、TSHの量を少なくできれば、腫瘍を大きくする作用も軽くできるわけです。
こういった効果を期待し、甲状腺ホルモン剤を服用します。
甲状腺ホルモン剤によってホルモン濃度が高まると、TSHの量が減り、結果として腫瘍が大きくなるのを抑えられる可能性があり、大きくさせないこともあります。
ただ、すべての患者さんに効果があらわれるわけではありません。腫瘍の縮小効果は0~60%と、報告にばらつきがあります。
小さくすることはできないまでも、大きくなるのを防ぐことはできるとも考えられます。
まず、6カ月ほど薬(チラーヂンS)を服用し、腫瘍の様子を見ながら、将来の治療法を(手術を含め)医師と相談するのもよいでしょう。

MEMO

  • 良性腫瘍の手術のしかた

    • 腫瘍が小さな場合は、「内視鏡下手術(VANS)」を選択することができます。襟が開いた服でも隠れる位置に、小さな手術あとが残るだけですみますので、若い女性などにも適した方法です。
    • 残りの甲状腺に再び腫瘍ができる可能性はないとはいえません。特に、腺腫様甲状腺腫にその傾向があります。
医療法人社団金地病院