甲状腺ホルモン含有のやせ薬は合併症を起こす危険がある

代謝が悪くなる橋本病だけでなく、バセドウ病でも、体重増加には注意が必要です。
そのため患者さんの中には、ダイエット法としてサプリメント(やせ薬)の使用を考える人がいるかもしれません。しかし、やせ薬の中には、甲状腺ホルモンが含まれている場合があります。
日本では1960年代に、健康障害を起こすことが明らかになり、甲状腺ホルモン含有のやせ薬は発売禁止になっています。
ところが2002年に、中国製のやせ薬が、大きな社会問題になりました。
中国製のやせ薬には、N-ニトロソフェンフルラミンという食欲抑制剤や甲状腺ホルモンが含まれていて、多くの人が肝機能障害や甲状腺機能障害を起こし、死亡者も出ました。
中国に限らず欧米でも、甲状腺ホルモン製剤は老化防止に効果があると信じられています。
このような風潮が影響し、日本では禁止されているにもかかわらず、個人輸入などで甲状腺ホルモンを含むサプリメント(ほとんどは含有成分の表示がない)が無制限に入ってきています。
甲状腺ホルモンが含まれていれば、確かに体重は減りますが、体内のホルモン濃度が高まり、さまざまな合併症を起こします。
甲状腺ホルモンを医師の指導がないまま無防備に摂取することは、大変に危険です。

健康食品は成分が不明で副作用が確認できない

甲状腺の病気を完全に治す治療法は、現在のところありません。それでも薬を飲んでいれば元気に過ごせるのですが、患者さんの中には、「もっと健康になりたい」「病気の再燃(さいねん)を防ぎたい」と、いわゆる健康食品や民間療法に関心を持つ人もいるようです。
健康食品や民間療法には、次のような問題があることを理解し、冷静に判断してください。主治医と相談することも大切です。

●不純物混入など汚染による副作用

人工的に合成される医薬品と異なり、健康食品には天然成分が含まれます。しかし、成分の明示は義務化されていなく、副作用の報告義務もありません。不純物を含んでいたり、表示されていない成分が加わっている可能性があっても、確かめようがないのです。

●医薬品との相互作用による副作用

健康食品の成分と、現在使っている医薬品の成分が体内で相互作用し、場合によっては、治療効果がなくなったり、病気を悪化させる可能性が出てきます。

●成分が不明

健康食品には成分の保証がなく、どんな成分が含まれているかも、ほとんどのものは不明です。仮にアレルギーが起こったとしても(健康食品がきっかけでなるケースも多い)、確かめようがないのです。

医療法人社団金地病院