手術より手軽で、薬より早く治療効果があらわれる

ヨウ素は、体内に入ると甲状腺に集まるという性質があります。この性質を利用し、放射性物質がついてヨウ素(131I)の小さなカプセルをたった1回だけ飲むと、それが甲状腺に取り込まれます。
放射性ヨウ素(131I)は、甲状腺細胞を少しずつ壊していき、甲状腺ホルモンをつくりにくくします。これによって、はれていた大きな甲状腺は徐々に小さくなっていきます。
手術ほどすぐ完全には治りきらない場合もありますが、手術より手軽で、薬より早く治療効果があらわれます。
1941年ごろ米国で始まり、日本では1955年ごろから行われるようになりました。

がんや白血病の心配はなし。合併症も少なく安全

放射線を使う治療というと、被曝の影響を心配する人がいるかもしれません。
しかし、アイソトープ治療はすでに70年近くの経験があり、発がん性(甲状腺がんや白血病など)への不安や、将来生まれてくる子どもへの影響などはまったくないことが明らかとなっています。
この治療を受けた人と受けなかった人の、がんの発生率を調べても、差はありませんでした。
また合併症も、バセドウ病治療の中ではもっとも少ないことがわかっています。
安全で確実な治療法であるために、医療費が高い米国では90%の人がアイソトープ治療を受けています。

機能低下症になったら薬でホルモンを補う

アイソトープ治療の効果は、どうしても個人差があり、甲状腺細胞を壊すために、壊しすぎると、治療後は、甲状腺機能低下症になる可能性があります。
これがアイソトープ治療の唯一の欠点です。

●簡単にできる補充療法

もしアイソトープ治療にともなう機能低下症になったとしても、不足する甲状腺ホルモンを補充する薬(甲状腺ホルモン剤)を、1日1回だけ、生涯にわたって服用していれば、副作用も、自覚症状もまったくなく、快適に毎日が過ごせます。

アイソトープ治療の進め方

  • 甲状腺への131Iの取り込みをよくするために、治療の1週間前からヨウ素を含む食事を制限し、3日前からは抗甲状腺薬を中止します。

  • 服用するのは131Iというアイソトープが入ったカプセルです。飲む量は、事前に甲状腺の重量などを測定して、その人に合った適量を計算します。

  • 実際の治療は、カプセルを1回水で飲むだけで終了。専用の放射線管理室で服用します。

  • 131I服用後、甲状腺が破壊され、ホルモンが一時的に多くなりますので、特に甲状腺のはれが大きい場合や、心臓病などの合併症がある場合、あるいは高齢者の場合は、約1週間ほど安静にして、入院管理したほうが安全です。

  • 131Iは、甲状腺にゆっくり作用します。ホルモン値が低下するまで1~2カ月、治療効果があらわれるまでに半年ほどかかります。そのため、必ず4カ月間は1カ月に1度ずつ通院。検査をしながら、甲状腺の薬量の調節が必要となります。

  • 通常は1回の服用ですが、どうしても効き方に個人差があるので、甲状腺が大きい人などは6カ月以上間隔をあけて、2回、3回と飲むこともあります。

  • 安全をはかるため、アイソトープ治療を行う設備には厳重な法的規制があり、経験豊富な専門医がいる病院でなくては受けられません。治療ができる病院は、まだ限られています。

  • 安全性をはかるため、カプセルを飲んでから1週間くらいは、ほかの人、特に乳幼児や妊婦との長時間の接触は避けます。
    また、甲状腺に取り込まれなかった放射性ヨウ素は、汗、唾液(だえき)、尿などから、数日間かけて体の外に排出されます。その数日間だけ、トイレの水の流し方など、日常生活に注意が必要となります。

アイソトープ治療がすすめられない人

  • 18歳以下の人
  • 妊娠中、および6カ月以内に妊娠を希望する人
  • 授乳中の人
  • 活動性のバセドウ病眼症がある人
医療法人社団金地病院