橋本病の治療
治療法は一つ。不足しているホルモンを薬で補います
ホルモンの不足がなければ治療をしないで経過を見る
橋本病では、病気と診断されても治療をしないことがあります。そういうと、患者さんの中には不安に感じる人がいますが、次のような場合は、薬を飲まなくても体に不都合はありません。
●甲状腺機能が正常な場合
血液検査で自己抗体(TgAb、TPOAb)が見つかっても、甲状腺ホルモンの状態が正常で、機能が低下していないなら、体に影響はなく、自覚症状もまったくないので、特に治療の心配はありません。
ただし、薬を飲まなくても、3~6カ月に1度は医師を受診し、経過を見る必要があります。将来的には、病気が進んで甲状腺ホルモンが不足する可能性があるからです。特に、妊娠・出産を希望する人は、チェックが欠かせません。
※機能低下がなくても、首のはれが大きい場合は、甲状腺ホルモン剤を服用して様子を見ることもあります。
ホルモンが不足していたら外から薬で補充する
甲状腺機能が低下している場合は、治療する必要があります。
バセドウ病の治療は、薬、手術、アイソトープ治療の3つの方法の中から選びますが、橋本病の治療法はただ一つ。薬によって、足りなくなっている甲状腺ホルモンを補う治療を行います。
組織が傷つき破壊された甲状腺を、もう一度ホルモンが合成・分泌できるように修復する方法はないので、外から補充するしかないのです。
●レボチロキシンナトリウム(T4)水和物
甲状腺ホルモン(T4)を人工的に合成した錠剤です。T4は、体の状態に合わせ、必要に応じて肝臓などでT3に変化します。持続的な治療に向いているため、治療ではT4が使われることがほとんどです。
服用は少量から始め徐々に増やして適量を決める
●最初は少量から
いくら体に必要なホルモンといっても、いきなり多くの量を補給しては、体全体のバランスをくずしてしまいます。
大量の甲状腺ホルモンは、心臓に負担をかけ、ときには狭心症や心筋梗塞を誘発することもあるのです。粘液水腫などで、ホルモン不足の程度が激しい場合ほど、慎重に進める必要があります。
●その人の必要量を決める
必要なホルモン量は、人によって違いがあります。そこで、最初は少量から始め、血液検査でホルモン濃度をはかりながら、徐々に増やして、適した量を見きわめます。服用後2~3カ月するとわかりますので、あとは、その維持量を継続して飲んでいきます。
●1~4カ月で症状が取れる
病気の程度などにより個人差がありますが、服用を始めて1~4カ月くらいで、甲状腺ホルモンが正常範囲になり、つらい症状が薄紙をはぐように取れていきます。
●副作用は少ない
甲状腺ホルモン剤の成分は、もともと人間の体にあるもので、異物ではありませんので、長期間、継続的に服用しても、ほとんど問題は起こりません。