甲状腺機能低下症が起こる原因には、橋本病以外にもさまざまなものがあります。
よく起こるのは、甲状腺の病気によるもので、このような機能低下症を「原発性甲状腺機能低下症」といいます。
また、下垂体の病気によって起こる機能低下症もあり、これを「二次性甲状腺機能低下症」といいます。

甲状腺の病気で起こる原発性の機能低下症

「原発性」というのは、病気が起こっている臓器そのものに原因があるという意味です。
原発性の甲状腺機能低下症で、圧倒的に多いのは橋本病が原因となるものです。
また、バセドウ病のアイソトープ治療や、甲状腺の切除手術によって起こるものもあります。
さらに、重度の機能低下症が起こる「特発(とくはつ)性粘液水腫(ねんえきすいしゅ)」という病気があります。

特発性粘液水腫とは

皮膚の乾燥、全身の倦怠感、寒がり、便秘など、橋本病そっくりの症状が起こりますが、首のはれはありません。
首がはれないのは、甲状腺の全体が破壊され萎縮(いしゅく)して、甲状腺自体が小さくなっているためです。
機能低下のレベルは、一般の橋本病より重く、独特の「むくみ」の症状が全身にあらわれます。場合によっては、思考力や精神活動の低下が起こることもあります。

下垂体の病気で起こる二次性の機能低下症

甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によってコントロールされています。そのため、下垂体に異常が起こってTSHの分泌が減ると、二次性の機能低下症が起こります。「二次性」とは、本来の甲状腺ではなく、それに付随するもの(下垂体)が原因になるといった意味です。

シーハン症候群

出産の際の大量出血のため、下垂体へ血液が行かなくなって下垂体が壊死(えし)し、TSHが分泌されなくなります。

下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)

下垂体が圧迫され、TSHの分泌が減ります。

大量のヨウ素摂取でも甲状腺機能低下症に

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になるものですが、ヨウ素類(特に昆布や、イソジンガーグルのうがい薬など)を毎日大量に摂取すると、甲状腺が腫大(しゅだい)したり、甲状腺機能低下症になる可能性があります。
過剰なヨウ素摂取を中止すれば、甲状腺機能は回復します。

甲状腺機能低下症の原因となるもの

甲状腺の病気が原因(原発性) 橋本病
甲状腺の手術後
バセドウ病のアイソトープ治療後
特発性粘液水腫
ヨウ素の過剰摂取
下垂体の病気が原因(二次性) シーハン症候群
下垂体腫瘍
頭蓋咽頭腫
下垂体の手術後
先天的な甲状腺機能の不足が原因 クレチン症
TSH欠損症
薬剤の使用が原因(薬剤性) インターフェロン(抗ウイルス薬、抗悪性腫瘍薬)
アミオダロン(抗不整脈薬)
リチウム(気分安定薬)
医療法人社団金地病院